ほぼ新車なのに10万円引き!? 絶対知っておくべき「未使用車」の基本
少しでも安く、良い状態のクルマを買いたい。クルマを買う人は、誰でもみんなそう思っているでしょう。そういう方に必ず知っていて欲しいのが、未使用車の存在です。もし知らないなら、ぜひ頭に入れておきましょう。
未使用車とは、新車と状態は同じだけど、無理に売られたために安く中古車市場で流通しているクルマです。
未使用車は、昔は「新古車」と呼ばれていました。しかし新車と区別がつきづらいということで、今は「新古車」という呼び名は禁止。現在では「未使用車」または「未使用中古車」と呼ばれるのが主流です。
目次
なぜ未使用車なんてものが発生するのか
「え?新車と同じ状態で安いの?そんなうまい話あるわけないでしょ」って感じる方も多いと思います。しかし、未使用車ってのは実際に存在するんです。しかもたくさん。まずは、どうして未使用車なんてものが発生するのか説明しますね。
自動車メーカーの激しい競争
自動車メーカーは、稼ぐために激しい販売台数競争をしています。最近では、特にダイハツとスズキの競争が熱いです。この2社は、長年「軽自動車販売台数ナンバーワン」の座を争っています。2006年までは長い間スズキが首位だったのですが、2007年にダイハツがトップを奪取。そこから8年連続でダイハツがギリギリでトップを守っていました。それが2014年にひっくり返り、スズキが首位に返り咲き。そして去年、2015年は、ダイハツがまたトップを取りました。まさにデッドヒート。
自動車屋さんとしては、お客さんと話す時に「ウチが販売台数ナンバーワンです!」って言えるかどうかが売れ行きに影響してきます。だから、どうしてもナンバーワンの座が欲しいわけです。
メーカーとディーラー
一般的に、自動車屋さんは「メーカー」と「ディーラー」とで会社が分かれています。
「メーカー」は自動車を作る会社。たとえば「ダイハツ工業株式会社」がメーカーです。工場を持ち、クルマを生産しています。
一方「ディーラー」は自動車を一般の人に売る会社で、「ダイハツ東京販売株式会社」のように地域ごとに細かく分かれています。街で見るクルマ屋さんはこのディーラーです。
メーカーは、子会社のディーラーを通してクルマを売っているわけですね。
販売奨励金の存在
そして、自動車業界には販売奨励金というものが存在します。これは、ディーラーが一定台数を売ったら、メーカーからディーラーに支払われるお金。要するに、「たくさん売ったらごほうびをあげますよ」ということです。たとえば、100台売ったら100万円あげますとか、そんな感じです。
そして、この販売奨励金が、未使用車を生みます。
販売奨励金で未使用車が発生!
例えば、ディーラーが99台までクルマを売ったとします。これだと、あと1台売れば100万円手に入りますよね。でも、その1台がなかなか売れなかったとします。そうなったらディーラーはどうするかというと、その1台をディーラー自身でムリヤリ買います。それでも売上台数にはなりますから。そうすると100台達成で100万円が手に入ります。
しかし、そうするとディーラーの手元に、ムリヤリ買った新品のクルマが残ります。ムリヤリ買ったクルマなので、使い道はありません。するとディーラーは、それをそのまま中古車として中古車オークション市場へ売ってしまうのです。
つまり、新車で買ったクルマをそのまま中古車として売っちゃうわけです。これが未使用車です。
特に軽自動車でたくさん発生
また、未使用車は軽自動車で発生しやすいと言われています。その理由は、軽自動車はメーカーとしての利幅が薄いから。
メーカーは工場でクルマを生産しています。軽自動車は競争が激しいので採算はギリギリです。そこで急に生産を減らすとどうなるか。生産が減っても工場の借地代みたいな固定費は減らないので、あっという間に利益が吹き飛ぶんです。
だから、メーカーとしては工場の稼働をあんまり変動させられない。そうすると、需要が弱くても生産し続けるしかない、という状況になります。需要が弱くても生産しちゃって、それをディーラーに押し付けちゃう。そうすると、やっぱりディーラーは一旦自分で買って、そのまんま中古車市場に売っちゃいます。そうして未使用車はどんどん発生していきます。
中古車流通の2.5%が未使用車
ちなみに、2011年に矢野経済研究所が調べたところによると、中古車流通台数の中で未使用車が占める割合は2.5%だそうです。割合的には少ないけど、探せば見つけられるといった感じでしょうか。
未使用車はほぼ新車
上記の通り、未使用車というのは、メーカーからディーラーが新車を買い、それがそのまま中古車市場へ売られたものです。ほぼ新車です。中古車業界として「新車とは名乗ってはいけない」と決められているので新車とは呼ばれませんが、こういう経緯で流通しているクルマなので、買い手としては新車と同じですよね。実際、未使用車はシートのビニールカバーがついたままだったりします。走行距離も、運搬するときに走った10km未満程度のことが多いです。
保証に関しても、新車と全く同じメーカー保証が付くことがほとんどです。状況によるので買う時に中古車屋さんに確認が必要ですが、大抵は付きます。故障があったら、年式と走行距離に応じて無料での修理などを受けられます。
あと、未使用車は、「元展示車」や「元試乗車」ではありません。一般の人の手は一切触れていないクルマです。
未使用車は10万円安い
未使用車は必ず選択肢に入れるべきです。もちろん状況によりますが、新車よりもほぼ間違いなく安く買えます。一般的に、未使用車の値段は新車の10万円引きくらい、と言われています。実際には新車だけど、中古車市場を通っちゃってるってことで、少し低い評価をされてしまうわけですね。
クルマの値段なので10万円引きというと1割に満たないくらいの割引率ですが、でも10万円も得できるなら大きいですよね。その浮いた分、貯金するもよし、どこかに旅行に行くもよし。新車をなんとか値引きしてもらおうと頑張る人も多いと思いますが、そこで頑張るよりも、未使用車を選んだほうが話が早いかもしれません。
値引き交渉は大変だ!
だってね、軽自動車で新車で10万円値引きしてもらうって大変なんですよ。そもそも、軽自動車の場合は新車値引きは「どんなに頑張っても10万円」というのが相場です。
そしてその頑張るってのは具体的にはどんなことなのか。それは以下のような感じです。
例えば、最初にダイハツのディーラーに行って「値引きいくら?」って聞いたら、たぶん2万円か3万円って言われます。
次に、対抗馬のスズキのディーラーに行って見積りをもらいましょう。その時に「値引きいくらよ?ダイハツは3万円って言ってるよ?」って言って30分くらい交渉します。そしたら5万円引きくらいの見積りが出てくるかもしれません。
そのスズキの見積りを持って、今度はまた最初のダイハツのお店に行きます。そして、「いや~、スズキがいい値引き額出してくれたんだよね~」って言って交渉したら、スズキと同じ5万円引きくらいは出てくるかもしれません。そこから更に「いや~、でもこれじゃあまだ決められないな~」って1時間くらい交渉したら、やっと値引き額が7万円くらいになる、かもしれません。車両価格からの値引きはそのあたりで限界。
そんで、そのあとにまた「もうひと押し欲しいんだよね~。あ、そうそう、なんかもうちょっとカッコ良くなるオプションあったよね?」って言って1時間くらい頑張ったら、ステッカーとかの外装品を3万円ぶんくらいサービスしてくれるかもしれません。
これで7万円引き+3万円サービスでマックスの10万円。これが新車10万円引き交渉のイメージです。結構なゲスい会話をしなくちゃなりません。しかも、そのゲスい会話をしても、値引きしてもらえない可能性もあります。そういう交渉を楽しめる人だったらいいかもしれないけど、大部分の人はそんなのやりたくないですよね。だったら未使用車を選んだ方が早いと感じる人がほとんどじゃないでしょうか。
3月と9月、12月はもっと安いかも!
また、10万円安いと書きましたが、これは通年での感覚的な平均値で、状況によってはもっと安くなることがあります。たとえば、2015年3月はダイハツとスズキが年度としての販売台数ナンバーワンを争って、とてつもない激しい競争をしていました。この時には、未使用車の値引きが20万円程度にまで達したという話を聞いたことがあります。
競争が激しければ激しいほど、値引き額は大きくなります。その競争は、毎年、年度末の3月と半期末の9月、あと年末の12月に激しくなります。だから、未使用車は3月と9月、12月が特に狙い目なのです。
未使用車はすぐ手に入る
これは未使用車ならではのメリットです。未使用車はすぐに手に入ります。一般的に、普通の新車を買った場合は納期が一ヶ月程度かかります。新車というのは基本的に注文を受けて生産するので、だいたい一ヶ月は待たないといけないんです。
でも、未使用車は違います。未使用車はさっき書いた通り、すでに生産されていて、中古車市場で流通しているクルマ。だから、お金さえ出せばすぐに買えちゃうんですよ。早ければ、中古車屋さんに行ったその日に乗って帰れます。手続きに時間がかかることがあるかもしれないけど、それでも大抵3日くらいで納車されます。
未使用車は色やメーカーオプションが選べない
そんな未使用車ですが、やっぱりいいことばかりじゃなくて、デメリットもあります。それは、色やオプションが選べないということ。
普通、新車を買うときには車体の色を選べますよね。それって、注文を受けてから生産して塗装するからできることなんですよ。未使用車はすでに生産されて流通しているクルマなので、色を選びたいと思ったら、その時に流通しているクルマの中から選ぶしかありません。
また、メーカーオプションも選べません。新車を買う場合だと、例えばフロアマットを付けてもらうとか、雨よけのバイザーを付けてくれとか、メーカーオプションとしてそういうことができますけど、未使用車の場合は、流通している時点で既にメーカーの手を離れてしまっているので、メーカーオプションを付けることはできません。
でも、たまたま自分の好みに合った色の未使用車があったとすれば、それはかなりお買い得と言えるでしょう。また、メーカーオプションを付けることはできませんが、中古車屋さんに市販品で似たようなものを付けてもらうことは大抵はできます。
未使用車でも新車より高くなることがある
稀に、未使用車が新車より高くなるケースがあります。代表的なのは、大人気車種で、新車の納期が長くなったとき。
新車の生産が追い付かなくて納期が半年待ちとかになることもたまにあります。2014年のスズキ・ハスラーなんかがそうでした。そうなると、未使用車の「すぐ手に入る」という特長に注目が集まり、オークション市場で高値が付くようになります。その結果、未使用車の価格が新車よりも高くなります。人気車種の場合は新車の値段も気にしておきましょう。
未使用車を選ぶにはどの中古車屋さんがいい?
そして、未使用車を買うにはどこがいいかというと、まず大手の中古車屋さん。最大手はガリバーで、他にはケーユーホールディングスやハナテン、ネクステージなんかが有名です。大手であれば在庫車が多いので、未使用車であっても、色を選んだりできるかもしれません。また、店舗数が多いので自分の家から行きやすい拠点がある可能性も高いです。まずそういった大手の中古車屋さんを頭に入れておきましょう。
そのほかにおすすめなのは、それぞれの地方で小さく展開している未使用車専門店。例えば、私が住む埼玉県東部ではウチダオートって会社が未使用車専門店を3店舗ほど展開しています。自分の地域にどんな未使用車専門店があるのかは、「都道府県名 未使用車」のキーワードで検索してみるといいですよ。例えば「神奈川県 未使用車」とか。それで探し当てたところを押さえておきましょう。
カーセンサーはちょっと弱いかも
あともう一つ。中古車業界だと「カーセンサー」がCMとかもやってて有名ですが、実は「カーセンサー」という中古車屋さんは存在しません。カーセンサーというのは、小さな中古車屋さんの在庫車の情報を集めてネット上で公開しているウェブサイトの名前です。カーセンサーに中古車の注文をすると、その申し込みを受けるのはどこかの町の小さな中古車屋さんです。カーセンサーで未使用車を選ぶのも悪い選択肢ではないと思いますが、未使用車の数は比較的少なくて、選びづらいと思います。
新車の価格も知っておこう
また、さっき書いた通り、未使用車が必ず新車より安いかというと、そうでない場合もあります。なので、未使用車を考えているなら、必ず新車だといくらなのかは把握しておきましょう。普通に街のクルマ屋さんに行くか、オートックワンのようなネット上から申し込める新車販売サイトで値段を聞いてみると良いでしょう。
まとめ!
- 未使用車とは、新車と状態はほぼ同じなのに、中古車市場で安く売られているクルマ
- 中古車市場で流通しているけど、一般の人の手は触れていない
- 色やオプションに制限があるが、10万円程度安く買える
- 未使用車は大手中古車店や地域の未使用車専門店で探せる
ライフスタイルや予算などによって、ベストのクルマは変わります。でも、未使用車の価格を確認せずにクルマを買うなんてありえません。絶対に選択肢には入れましょう!