NASVAの「メーカー負担の衝突安全性試験」について聞いてみた

日本にはNASVAさんっていう団体さんがありまして、衝突安全性能の評価をやってくれてます。そこが、「試験費用メーカー負担での衝突安全性試験」をしていると聞きました。ちょっと気になる。

何が気になるのかというと、私が以前聞いていた情報と食い違っていること。2年前、2013年の東京モーターショーでNASVAさんに聞いてみたことがあるのですが、その時には、「必ず全ての費用をNASVA側で出して試験している」と聞いていたんですよ。NASVAは街のクルマ屋さんに行って買ったクルマで試験している、と。そう聞いてたんです。
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その時聞いたのは、衝突安全性試験の予算は年間1億円程度で、その中でやりくりして年間5車種程度を試験しているとのこと。

1億円で年間5車種。これは計算してみると「だいたいそんなもんかな」という感覚の数字になります。というのは、NASVAの衝突安全性試験では、1車種に対して6パターンの衝突安全性試験をします。つまり、1車種につき6台、試験車種が必要なんです。1台150万円としても車両価格だけで900万円。そしてこれに試験場を用意するためのお金も必要だから、まあなんというか1億円しかないならそんなもんだわな、という感じになります。

しかし、マガジンX12月26日発売号に、「ホンダがメーカー負担でNASVAに試験してもらった」という記述があったんです。

ニューモデルマガジンX 2016年 02 月号 [雑誌]
by カエレバ

試験対象車種が増えるのは直接的には嬉しいけど、メーカーとNASVAがズブズブの関係になっちゃって試験内容が公正じゃなくなっちゃったら困ります。気になったのでNASVAさんに質問メールを投げてみました。

そしたら回答のお電話をNASVAさんからくれました。あら嬉しい。ウチみたいなブログからの問い合わせなんてスルーされちゃうかなと思ったので。

お電話をもらったので色々話したのですが、だいたい内容はこんな感じ。

私: 自動車メーカーの負担で衝突安全性試験をしているのは事実ですか?

NASVAの人(以下N): 事実です。一部そういう申し込みを受け、試験し、公開している車種があります。

私: 自動車メーカー側が試験費用を負担するというのは、具体的にはどのように負担するんですか?現金で受け取るんですか?

N: ディーラーで試験用車両を買うとき、代金の請求先をメーカーにしてもらってます。

私: 請求先をメーカーにしてしまうと、その時点でNASVAが買うってことがメーカーに知られてしまいますよね。そこでメーカー側が何か細工してしまうことも考えられるのでは?

N: 基本的に、ディーラーの在庫車から買うので、そこで不正が行われる可能性は少ないと考えています。ディーラーに行って、「そこに置いてあるクルマを買う」というような言い方で買うからです。契約後に生産される形になるような買い方を避けているので、危険性は低いということです。
※↑ここ、NASVAの方はやや口ごもり気味でした。たぶん独自の考え方とかノウハウとかがあって、やっぱりあまり明かしたくないんだと思います。

と、そんな感じ。

とりあえず私としては「メーカー側が費用負担すると、NASVAが試験内容を甘くするようなことにならないか?」ということが心配だったわけですが、ひとまずそんな感じ。完全に心配なし、という感じではないですが、それなりに気を使っており、もしNASVAを騙すとすれば、メーカーとディーラーがそうとう強く悪だくみしないとムリっぽいなと感じました。

ひとまず安心、かな。予算が限られている中で大変だけど、NASVAさんがやっていることは、社会的に必要とされている仕事だと思います。是非とも誇りを持って頑張って頂きたいです!